こばし鍼灸(掃骨)院 の日記
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172.《H22/10/3のYahoo!ブログ再掲》『私はからだのお百姓さん』/160928再掲候補
2016.09.28
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患者さま各位
鍼灸師免許から、早いもので、もう30年が目前に迫ってきました。
(これは、H22年10月の話ですが…)
皆さま方のお力添えを持ちまして、あんなにも気弱で引っ込み思案だった
acupunは、もう この仕事以外には考えられない位、逞しい鍼灸師に
育て上げて頂きました。 有り難うございました。
ここに、心からの感謝と共に、我が家の特異な療法の成り立ちを振り返り、
これからの更なる精進のお誓いに、代えさせて頂きたいと存じます。
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私はからだのお百姓さん
皆さまご承知のように“はり・きゅう”、とりわけ“ハリ治療”は、
撫で擦る小児科的な運用~自律神経の調整などに代表される内科的“優”から、
変質硬化してしまった局所を切り崩すような外科的“剛”まで。
その守備範囲はとても広く、鍼灸師の層は厚いものです。
私は、どちらかと言えば後者を得意としていますが、それは決して
初めからそうしたかった訳では有りません。
心地よく、眠くなる様な治療に憧れ、それが名人だと思っていましたから。
素朴な疑問 その1.はり・きゅうの真価、鍼灸師の存在理由とは?
長年、自分の仕事に自信と誇りを持ちたくて、また、統合医療の一員として、
ほんとうにお役に立ちたくて、そう考え続けてきました。
そうして、皆さまとのお話合い、インフォームドコンセントを密にし、
共に工夫を重ね・・・と、言うよりはむしろ、皆さまに背中を押され
お尻を叩かれて、文字通り行き着いたところが、他ならぬ『骨格』でした。
そこにアプローチする手段が、明治東洋医学院発祥の『小山曲泉流
神経痛掃骨鍼法』だった訳です。
体重のおよそ50%が筋肉、同じく20%は骨、締めて70%は
身体を支持し、動かすための装置《運動器》と云うことになります。
とりわけその筋肉は、関節を跨ぐ形で骨にしっかりと根を張っていて、
ギューッと縮むことで関節やその周辺に猛烈な負担を強いながら、向こう側の
骨を手繰り寄せる。
筋の起始部・停止部・付着部は、支点・力点・作用点として、梃子(てこ)や
滑車の働きを駆使して、身体(骨格)を動かしている。
日常動作であれ、ハードなスポーツであれ原理は同じ。日々の多彩な
動きによって傷つき、錆び付き、栄養は持ち出され、不完全燃焼の
老廃物はこびり付き・・・。
極めてバランスの悪い筋肉~軟部組織の中で、ダブルパンチ・トリプルパンチを
喰って悲鳴を上げているのは、他ならぬ筋・骨格であると気付きました。
生身の躰の、その作業現場に直接アプローチできるもの、それが他ならぬ
“鍼灸”とりわけハリ。
単純で、素朴で、リズナブルな(計画された)「キズ・ヤケド」であるが故に、
脳や神経をごま化すことなく、本来生体が具えている潜在自然の治癒力を、
何処までも引き出し、活かすことができる!
素朴な疑問 その2. 慢性化・老化といわれる局所には、一体何が?
専門的な研究、考察は学者方に委ねるとして―― “慢性化”も“老化”も、
生体が自力では浄化も修復再生も出来なくなった状態と仮定します。
原因は何であれ、その局所は循環が悪くて変質していまっている。
機能の低下のみならず、器質的な変化まで来たしている。
正常な血液なら、お醤油くらいの成分と濃さでサラサラ サラサラ・・・
ところが悪条件が重なれば、ソース→ケチャップ→煮こごり→お焦げ・・・
と姿を換え、終いには丈夫なはずの骨格にまで、ダメージを与えてしまう。
これを繰り返した局所の有り様は、口腔内の現象に似てはいないでしょうか。
虫歯≒骨壊死、歯石沈着≒石灰沈着、歯周病≒炎症…。
菌の作用によるか、変性によるかは別にして。
畑に例えれば、踏み躙られて、水も滲み込まない、正常な植物は育たない。
生えているのは、頑固な夏の雑草《チカラシバ》?
極端な言い方をすれば、ガレキが埋まっている。
コンクリート詰めになっている。
畑としての機能を取り戻すには、耕すしかない。
宙(そら)の一員、ヒトもまた同じ。
生体はその事態を熟知していて、どんなにか自力で修復したがっている。
その為に、フレッシュな血液の潅流を待ち焦がれている。
そのサインが、『痛い、ダルイ、凝る、突っ張る、痺れる、ムズ痒い』等々々。
どれもこれも、私たちにとっては不愉快なサインばかりですが、これら、
生体からの訴えがいかに大切か。
機能的な問題であれ器質的な問題であれ、これらの諸症状によく耳を傾け、
どこまでも聞き取って、癒着は剥がす、シコリはつぶす、沈着物は
こそげ落とす―――
言葉はすこぶる乱暴だけれど、固執した病巣を切り崩し、立ち消えして
燻ぶる局所を掻き立て、再燃させ、再構築を促す・・・
この技術を称して、私は『骨格ケレン』と名付けました。
期する処はひたすら、血の巡り血の循り。それ以外には何もない・・・
この考え方は今も変わらず、これからも又、身体のお百姓である私は、
鍼という道具で、一心に耕やしほぐし続ける事でしょう。
オウナーである皆さまには、お身体が必要とする“水や肥料”、すなわち
血液のもとである“飲み物・食べ物”の管理と、《“適切な運動”》と言う
責を負うて頂きながら・・・
どうぞ、今後ともご指導ご鞭撻ならびにご厚誼のほどを、
よろしく宜しく、お願い申し上げます。
平成22年10月吉日
こばし鍼灸院 研珠庵acu 小橋(本多)正枝
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P/S 実を言うと、この時点では、結合組織Fascia~筋膜Miofascia/
線維芽細胞Fibroblastの機能についてあまり考えていなかった。知らなかった。
因みに、線維芽細胞は結合組織の固有細胞で、平常はめだった機能を有しないが、
ひとたび組織に揖傷が加わると局所にて細胞分裂、組織細胞と細胞外マトリックス
双方の産生に携わり、創傷治癒の過程で重要な働きを果たす。 すなわち、
Ⅰ.損傷を引き金に分裂増殖し、
Ⅱ.増殖した細胞群がコラーゲン・エラスチン線維およびヒアルロン酸を分泌。
Ⅲ.線維を束ね、組織構造物を再構築する。=筋・骨格・組織の再生。
このことは、いま「美顔、美顔」と喧伝されるが、体内の軟部組織における
Fasciaの量は、体表のその比ではない。
今後この筋膜が健康に如何に深く係わっているか、認識を深めることになるだろう。
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文中の「“適切な運動”と言う責」に関しましては、
『中高年からの運動開始の注意点』をH23/8/11のブログに書き記しました。
ご参照頂ければ幸いです。
http://blogs.yahoo.co.jp/ms_acupun/5616137.html
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